猫でもわかる 秘密の英語勉強会

グレッグのダメ日記で英語多読!『Diary of a Wimpy Kid』

英語多読でブレイクスルー

非常に効果があることで知られている英語勉強法の 1 つに「多読」がある。1 文 1 文を丁寧に読み解く「精読」とは異なり、多くの本や漫画、新聞記事などをどんどん読んでいくという至ってシンプルな勉強法だ。ある高校では、学習カリキュラムに多読を取り入れたことで、生徒の英語力が急上昇したという事例もある。一般的な日本の英語学習では、読書量が圧倒的に不足しているのである。

数年前の話になるが、僕自身も多読の効果を実感した経験がある。英語記事の多読を毎日 30〜60 分、数ヶ月間行ったことで、それまでいくら勉強しても届かなかった TOEIC 900 点を大きく越え 950 点 (L:490 R:460) に達したのだ。

TOEIC スコアシート
当時の TOEIC スコアシート (現在は TOEIC L&R)

僕は TOEIC を英語学習の目的にしているわけではないので、それ以来まったく受験していない。一度でも 900 点を突破したらお腹いっぱい、英語学習のエンジョイ勢で十分だ。本ブログも、英語を楽しく学ぶことに主眼を置いている。そのため、このスコアが僕にとって最初で最後の 900 点台である。

ところで、多読というとリーディング特化型の勉強法だと思われるかもしれないが、意外なことに多読はリスニング力も鍛えてくれる。英文には頻出パターンがあり、多読を通してより多くのパターンに慣れ親しむことで、リスニング時の瞬発的な理解力が向上するためである。

簡単な例を挙げると、"Feel free ..." と聞こえたとき、ある程度英語に慣れている人ならこの後の展開がなんとなく予想できるだろう。わずか 2 単語だが、慣れている人とそうでない人では、かるたのベテランと初心者のように出だしですでに差が付いているのだ。

また、英語のアウトプット (スピーキング、ライティング) スキルを伸ばすにも、大量のインプット (多読、多聴) が必要になる。見たことも聞いたこともない単語やフレーズが、自分の口から出てくるはずがないのである。

ある程度英語が聞けて、喋れるという状態になるための第一歩は、ある英語表現を聞いた、あるいは見た経験が十分にあるという状態 (すなわち、十分なインプット) を作り出すことにあります。
第二言語習得論に基づく、もっとも効率的な英語学習法

ただし、多読・多聴によりアウトプットスキルが自動的に身につくわけではないので注意してほしい。アウトプット学習については後日あらためて説明するが、多読はあくまでインプット学習であり、何でも身につく魔法の勉強法ではない。

もちろんどんな本でも多読に適しているわけではない。つまらない作品をイヤイヤ読んでも効果が薄い。面白い作品や興味のある分野でないと長続きしないだろう。継続は力なり。決して楽をして英語を身につけたい人の勉強法ではないので注意してほしい。

今回は世界中で 1 億 8000 万部以上売れている大人気シリーズ『Diary of a Wimpy Kid』を紹介する。児童向けのコメディ小説だが、大人でも楽しく読めると評判である。

『Diary of a Wimpy Kid』ってどんな本?

『Diary of a Wimpy Kid』は、アメリカの作家ジェフ・キニーによって執筆された児童向けコメディ小説。公開以来世界中で大人気となり、続編が多数出版され、現在までに 3 本の映画が公開されている。日本語翻訳版は『グレッグのダメ日記』。

米 Amazon.com で『Diary of a Wimpy Kid』の評価を見ると、レビュー数が約 1 万、評価の平均値が星 4.7 となっている。このことからも人気の高さがうかがえる。

Diary of a Wimpy Kid
Amazon.com の評価

子供向けのアニメやゲームが溢れている現代で、小説がこれほど高く評価されることの意味は言うまでもないだろう。

僕は大人なのでさすがに大笑いこそしなかったが、フフッと笑ってしまう場面はいくつもあった。巻末のプロフィールによると作者はオンラインゲームの開発者およびデザイナーということだが、笑いのロジックをしっかり抑えた安定感はさすがである。


世界中で大人気!「グレッグのダメ日記」

『Diary of a Wimpy Kid』の特徴

主人公は中学生になったばかりのグレッグ・ヘフリー。彼が日常で経験したできごとや冒険などが、イラストとともに日記形式で面白おかしく紹介されている。ほぼすべてのページにイラストが挿入されているため絵本に近い印象を受ける。

Winpy kid
『Diary of a Wimpy Kid』

『Diary of a Wimpy Kid』を見開きで見ると上の画像の通り。このように全体的にイラストが多く、普通の小説のように文字でびっしりというわけではない。このような子供を飽きさせない工夫も人気の秘訣だろう。

また、日記風小説のため口語的な表現が多く、一般的な英語の教科書や参考書では学べない表現が多いのも特徴。アメリカの子供たちの日常や学校生活などが中心に描かれているため、文化の違いを読み取るのも面白い。

Want to come over to my hose and play
『Diary of a Wimpy Kid』

上の画像は、親友のロウリーが「うちに来て遊ばない?」と誘うシーン。英語の授業ではこのような疑問文を Do you want to 〜? と習うが、実際には画像のように Want to 〜? と言うことも多い。リアルの英語は教科書通りではないのである。

ところで、ロウリーの発言を受けたグレッグ (右から 2 人目の少年) がなぜギョッとしているのかわかるだろうか。ヒントは、吹き出しの中で強調されている play 「遊ぶ」という単語にある。

これに続くグレッグの記述を引用する。

I have told Rowley at least a billion times that now that we're in middle school, you're supposed to say "hang out", not "play."
Diary of a Wimpy Kid

グレッグは日記に「もう中学生なのだから play (遊ぶ) ではなく hang out (つるむ) と言ってくれ」と記している。play は小さな子が遊ぶイメージの表現なので、そういうふうに誘われたくないというグレッグの中学生らしい一面が読み取れるだろう。小柄で冴えないグレッグは、クールな中学生になりたいのだ。

(追記:ここでは middle school を中学と訳したが、アメリカのミドルスクールは日本の小 5 〜 中 2 に対応する。翻訳版を確認したところ小学 6 年生と訳されていた。映画版では 11 歳の中学生という設定になっており、日本とアメリカの制度の違いのためにややこしいことになっている)

「遊ぶ = play」と単純に覚えていては、この微妙な違いを意識しないかもしれない。『Diary of a Wimpy Kid』にはこのようなシーンが多いため、参考書とは違うリアルな英語表現を学ぶことができる。日本にいながら、アメリカの中学生活を疑似体験するようなものだ。

また、上の例文では now that (今や〜だから) や be supposed to (〜することになっている) などの頻出フレーズも自然に使われているため、多読を通して重要な単語やフレーズが徐々に身についてくる。もちろん、単語集でもこれらを覚えることはできるが、映画や小説の方が「使いどころ」がイメージしやすいだろう。また、実際に使われているシーンとあわせて覚えると記憶に残りやすい。人間の脳は、複数の情報を関連付けると記憶が定着しやすくなるためである。コンビニの店内 BGM を聞いて、ドラマやアニメの映像を思い出すようなものだ。

 『Diary of a Wimpy Kid』の特徴
  • 主人公グレッグの日記風小説
  • ほぼ全ページにイラスト
  • 教科書では学べない英語表現が多数

日本語翻訳版は『グレッグのダメ日記』

『Diary of a Wimpy Kid』シリーズの日本語翻訳版は『グレッグのダメ日記』。

原作は口語的な表現が多く、日本の学校で習う英語とはかなり異なるため、初めてお目にかかるフレーズも多いだろう。一読してよくわからない箇所はそのまま読み飛ばしても良いが、どうしても気になる場合は翻訳版と合わせて読むと理解しやすい。『Diary of a Wimpy Kid』シリーズの 11 作目まですべて翻訳されている。

Diary of a Wimpy Kid
『Diary of a Wimpy Kid』
グレッグのダメ日記
『グレッグのダメ日記』

『グレッグのダメ日記』を見開きで参照すると以下の画像の通り。原作の面白さはそのままに読みやすい日本語で訳されており、原作より先に翻訳版に出会ってファンになった読者も多い。

やっぱりむいてないよ
『グレッグのダメ日記10 やっぱり、むいてないよ!』

 

ちなみに、原作は Kindle 版、ハードカバー版、ペーパーバック版が販売されているが、翻訳は Kindle 版とハードカバー版の 2 種類のみ。ペーパーバック版とハードカバー版の重量をそれぞれ計測すると次ようになる。

164g
ペーパーバック版:164g
411g
ハードカバー版:411g

重量の差は約 2.5 倍。見た目にはあまり変わらないが、手に持ってみるとハードカバー版の方がずっしりと重く感じる。

また、以下の画像の通りハードカバー版は他の形式の 2 倍近い価格になっている。コレクターでもない限り、重くて高価なハードカバー版を選択するメリットはあまりないだろう。

価格
『Diary of a Wimpy Kid』の価格

 

『Diary of a Wimpy Kid』シリーズで英語多読—グレッグはアメリカ版「のび太」だ

英語を修むる青年は、ある程度まで修めたら辞書を引かないでむちゃくちゃに英書をたくさんと読むがよい。少しわからない節があって、そこは飛ばして読んでいっても、どしどしと読書していくと、ついにはわかるようになる。また、前後の関係でも了解せられる。それでもわからな いのは、めったに出ない文字である。要するに、英語を学ぶものは日本人がちょうど国語を学ぶような状態に自然的慣習によってやるがよい。すなわち、いくへんとなく繰り返し繰り返しするがよい。
僕は英語で苦労した記憶がありません。高校のときに自分に「英語の原書をたくさん読む」という無茶ぶりをしたのが効いたようです。『赤毛のアン』シリーズや科学書などの英語の原書を、3年間で30冊ぐらい読みました。最初は苦しかったのですが、読み終えたあとは、大学入試くらいの英語だったら問題ない状態になりました。

夏目漱石をはじめ、英語の効果的な勉強法として「多読」を推奨する学者や英語講師は多い。言語は理屈だけでなく「慣れ」で覚える必要があるからだ。ここでは、『Diary of a Wimpy Kid』シリーズを簡単に紹介する。

『Diary of a Wimpy Kid』(1 作目)

1 作目では、グレッグが日記を書くことになった理由の説明から物語が始まる。日記には、グレッグが通う学校や日常でのできごと、たとえば腐っているチーズに触った人が他の人にタッチするまで嫌われる「チーズタッチ (えんがちょ)」騒ぎや、ハロウィンなどのイベントがイラストとともにコミカルに描かれている。ハロウィンといっても、日本流のコスプレ大会ではなく、お菓子をもらうために近所の家を訪れて回るアメリカ流のハロウィンだ。間違った知識を正すには丁度良い。

ちなみに、チーズタッチから逃れるには指をクロスすれば良い。この辺のルールは日本の子供と大差ないのが面白い。一体誰が考案したのだろう。

シリーズを通して、基本的にグレッグはずる賢いけどドジな少年だ。自分が人気者になるためにいろいろ画策するが、失敗ばかりでなにもかも裏目に出てしまう。児童向け小説らしい、ユニークなキャラクターである。

ずる賢くてドジばかりなグレッグの物語を読んで、僕はドラえもんの「のび太」を連想した。人気作品には共通点が多いのかもしれない。

『Rodrick Rules』(2 作目)

『Diary of a Wimpy Kid』(1 作目) から 1 年が経過し、のび太、もといグレッグは新しい日記帳を手に入れる。新学期の始まりである。

前作からの「チーズタッチ (えんがちょ)」を何も知らない転入生になすりつけたり、短編小説を読んで読書感想文を書いたりするなど、グレッグのずる賢さがふんだんに発揮されていて面白い。そして相変わらずのドジっ子だ。グレッグはいつも失敗ばかりしている。

本作では、グレッグの母親が考案した「ママ・マネー」が登場する。これは家のお手伝いをすることで得られる仮想通貨で、100 分の 1 のレートで本物のお金と交換できることになっている。グレッグの兄ロドリックはママ・マネーをすぐに換金してしまうが、グレッグは頑張ってたくさん貯めようと決心する。

『The Last Straw』(3 作目)

グレッグの父親は、グレッグと兄のロドリックに恥をかかされたことに腹を立て、グレッグたちに厳しく接するようになる。このままでは校則の厳しいスパッグ高校に入れられるかもしれない。

グレッグはボーイスカウトなどの活動に取り組むものの、何をやってもうまくいかない。気になる同級生ホリーとも仲良くなりたいが、相変わらずグレッグは失敗ばかりしてしまう。

本作は 1 月 1 日から物語が始まる。みんなが新年の目標を立てる中、グレッグはもうすでに素晴らしい人間だからと何も頑張ろうとしない。この自信は一体どこからくるのやら。

『Dog Days』(4 作目)

6 月になり、グレッグの学校は夏休みに入る。日本の小・中学校は 7 月下旬 〜 8 月末のおよそ 40 日間が夏休みの地域が多いが、アメリカでは 6 月上旬 〜 8 月下旬までのおよそ 3 ヶ月間が夏休みになる。

また、日本では 4 月から新学年になるが、アメリカでは 9 月からの開始となる。アメリカの夏休みは新学年開始前の長期休暇なので、日本の春休みと同じ感覚になる。混乱を避けるために覚えておきたい。

4 作目では、グレッグたちの夏休みの過ごし方がテーマとなっている。

『The Ugly Truth』(5 作目)

9 月、これから新学期が始まるというのに、親友のロウリーと大げんかをして気まずくなる。このままでは学校で一緒に過ごす相手がいなくなってしまうが、一方のロウリーは母親がお金で雇った友達と遊んでいた。

学校では、保険の授業で子育てについて勉強する。子育ての大変さを身をもって理解するため、先生が生徒たちに卵を 1 つずつ配る。そして、卵をいったん家に持って帰り、翌日また学校へ持ってくるようにと指示を出す。

11 月、上級生のジョーダンからパーティに来ないかと誘われる。女の子もたくさん集まるパーティなのでグレッグは大喜び。しかし、同じ日に親戚の結婚式が開かれるという。

 

コメディ映画『グレッグのダメ日記』

前述の通り、『Diary of a Wimpy Kid』は現在までに 3 本の映画が公開されている。DVD 版および Blue-ray 版も発売されており、米 Amazon.com での評価も高い。

DVD 3 本セット版の評価
DVD 3 本セット版の評価

『グレッグのダメ日記』

1 作目の邦題は『グレッグのダメ日記』。グレッグは学校の人気者になりたくて奮闘するが、何をやっても失敗ばかりでどんどん評判が悪くなっていく。そしてあるできごとをきっかけに、親友ローリーとの間で大きな問題が発生する。

この映画は原作 (1 作目) の話が基になったコメディ作品。初見の場合、原作と映画のどちらから手をつけるべきかという問題があるが、先に映画で全体のストーリーをつかんでから原作を読んでも問題ない。むしろ概要を理解している方が原作も読みやすくなるだろう。

人気小説の実写化は、往々にしてつまらなくなるものだ。僕はそれほど期待せずに映画版を観たのだが、さすがは人気コメディ作品、思わず吹き出してしまうシーンが何度もあった。ちゃんと面白おかしく作られている。英語の小説に抵抗がある人でも、映画版なら気軽に楽しめるのではないだろうか。

『グレッグのおきて』

映画 2 作目は『Diary of a Wimpy Kid: Rodrick Rules』、邦題は『グレッグのおきて』。原作の 2 作目に対応している。

本作では、兄弟仲の悪いグレッグたちを見かねた母親が「ママ・マネー」を考案する。これはグレッグたちが仲良くすると母親から貰える仮想通貨だ。ある程度貯めると本物のお金と交換できる仕組みになっている。

その頃、グレッグの町ではタレント・コンテストの開催が決定される。優勝賞金は 1000 ドル、しかも人気者になれる絶好のチャンスだ。グレッグの兄ロドリックは自分の所属するバンド「ローディッド・ダイパー (うんちしたおむつ)」と共に参加するつもりである。

しかし、ロドリックが引き起こしたある出来事を理由に、コンテストへの出場が危ぶまれる。いつも喧嘩ばかりしているグレッグだが、兄の出場のために一計を案じる。

『グレッグのダメ日記3』

映画 3 作目は『Diary of a Wimpy Kid: Dog Days』、邦題は『グレッグのダメ日記3』。

気になる同級生ホリーと仲良くなりたいグレッグだが、相変わらず何をやっても失敗ばかりだ。グレッグは何とかして彼女とお近づきになりたいと考える。

学校は夏休み。グレッグは毎日家でテレビゲームをして過ごしたかったが、父親がそれを許さない。子供は外に出て運動をするべきだと考えているのだ。ずる賢いグレッグは、スプリンクラーの水を浴びて汗をかいたようにみせかけるが、あっさり嘘がバレてしまいゲームが禁止される。

ゲームを禁止されたグレッグのために、母親が自宅で読書会を開く。グレッグは読書会から逃げるためにロウリーともにカントリークラブへ。そこでグレッグたちはホリーと再会する。

Amazon プライムで無料鑑賞

これらの映画は、残念ながら日本ではまだ 2 作目までしか DVD 化されていないが、Amazon プライムビデオですべて提供されているので活用してほしい。プライム会員なら 1 作目は無料、2 作目以降は有料レンタル (300円) となっている。

 

おわりに:最高の勉強法は「継続」である

今回は英語多読の簡単な説明と、大人気シリーズ『Diary of a Wimpy Kid』および『グレッグのダメ日記』を紹介した。

繰り返しになるが、多読はインプット学習なのでそれだけで英語が話せるようになるわけではない。しかし、英語を話すためにもインプット学習は必要になる。大量のインプットにより単語やフレーズなどを蓄え、アウトプット練習によりそれらを使いこなせるようにするのである。今はオンライン英会話や英会話カフェなど、日本でも英語を話す機会を作ろうと思えばいくらでも作れる時代だ。

もちろん、豊富な知識を蓄えつつ十分なアウトプット練習をするには相応の時間が必要になる。そのため、諦めずに継続して勉強・練習し続けることが不可欠である。継続のコツは、プロセスや寄り道を楽しむことだ。そもそも、外国語学習には終わりがない。近道を一気に駆け抜けようという心構えでは、長続きしないことが目に見えている。

道草を楽しめ、大いにな。
ジン=フリークス