暖簾に腕押し



暖簾に腕押し。

出た、すぐシャドウボクシングしたがるやつ。

このことわざの意味は、何の張り合いも手応えもないということ。暖簾 (のれん) は知っているよね? 飲み屋の入り口に垂れ下がっている布があるでしょ。ひらひらしているから手で押しても手応えがないんだよ。

僕はまだ飲み屋に行ける年齢じゃないんです。でも暖簾ならラーメン屋にありますね。

同じ意味のことわざに「ぬかに釘」などがあるよ。

そして、「暖簾に腕押し」の英語版はこれ。
[英語のことわざ]
All is lost that is given to a fool.
悪人に与えられるものは皆むだになる。

All is lost は「皆むだになる」、その後の that が関係代名詞で、that is given to a fool 「悪人に与えられる」が All に説明を加えているよ。

主語が All なのに、述語動詞は is なんですね。are じゃないんだ。

そう、この英文の All は「すべてのもの」という意味で単数扱いで使われているの。すべてのものを 1 つのまとまりとして見ているんだね。

ビートルズの曲に All You Need Is Love というのがあるんだけど、これも述語動詞は is だね。ちなみにこの曲の邦題は「愛こそはすべて」。

All you need is love を直訳すると「あなたに必要なすべてのものは愛」だから、意訳すると「必要なのものは (足りないものは) 愛だけ」となる。

「愛こそはすべて」とはちょっと印象が違いますね。

うん。この曲の訳詞 (歌詞の翻訳) の中で、All you need is love につながるところに誤訳があって、どうも意味を取り違えているっぽいの。

あらら。どんな間違いですか?

簡単に言うと、誤訳の方は「あなたにできることは何もないけど愛さえあればそれでいいよ」みたいな歌詞で、正しくは「あなたにできないことなど何もない。必要なものは (足りないものは) 愛だけ」という感じだね。

真逆だ。

「できないことなど何もない」という部分がちょっとややこしくて誤訳の原因になっているんだね。

さて、話をことわざに戻そう。同じ意味のことわざにこんなのがあるよ。
[類句1]
It is like beating the air.
空気を叩くようだ。
[類句2]
He catches the wind with a net.
網で風を捕える。

[類句1] の beating the air は「空気を叩くこと」という意味。

[類句2] の with は道具や手段を表すときの使われ方だね。だから、with a net で「網を使って」という意味。

どちらも手応えがなさそうですね。

He catches the wind with a net.


僕たちはなんてたくさんのことを学ばなければならないのだろう。
登場キャラクター

シン
英語が苦手な少年。ミサから英語を教わっている。

ミサ
英語を教えてくれる近所のお姉さん。

レイ
シンの同級生。絵を描いて勉強会のサポートをしている。