(※ 本記事は数年前に他のブログで書いた記事に修正を加えたものです)
『The Patient』
今回は、ペンギンリーダーズの短編集『SHERLOCK HOLMES SHORT STORIES』に収録されている『The Patient』を紹介します。
Penguin Readers: Level 5 SHERLOCK HOLMES SHORT STORIES | |
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あらすじと感想
10月のある日、この頃ホームズとワトソンはベイカー街の下宿で同居しているのですが、2人の元に33〜34歳の男がやってきます。彼の名前はパーシー・トレヴェリアン、開業医で今回の依頼者です。トレヴェリアンは、ブルック街にある彼の家で最近おかしなことが立て続けに起こっていると言います。
話は開業前にさかのぼります。トレヴェリアンが若い頃、開業するための資金がなくて困っていたところに、突然ブレッシントンと名乗る紳士が訪れました。彼はトレヴェリアンに、「悪い習慣はないか?」「大酒は飲むか?」などと質問した後、開業に必要な金も建物もすべて提供すると言いました。その代わり病院の収入の四分の三をブレッシントンが、残りをトレヴェリアンが受け取るという約束です。そして、心臓の悪いブレッシントンも、定期的に医者の診療を受ける必要があるため、入院患者として同じ家に住むことになりました。
ブレッシントンは人付き合いが悪く滅多に外出することはありませんでしたが、毎晩同じ時間にトレヴェリアンの診察室に来て、その日の収入から自分の取り分をもらって金庫にしまうという習慣がありました。それから数年、トレヴェリアンは優秀だったので、2人はどんどん裕福になっていきました。そしてトレヴェリアンがホームズとワトソンの下宿に来る数週間前に事件は起きました。
ある日、トレヴェリアンの診察室にカタレプシー(強硬症)の患者とその息子がやってきます。トレヴェリアンが診療をしていると、患者が突然固まってしまいました。どうやらカタレプシーの発作を起こしたようです。そこでトレヴェリアンが薬を取りにいき、5分ほどして診察室に戻ってみると患者の姿が見当たりません。待合室にいるはずの息子もいなくなっていました。雇っている給仕の少年は何も聞いていないといいます。結局2人は見つかりませんでした。
その後もトレヴェリアンの家では不思議な出来事が起こります。一体、何がどうなっているのでしょうか。
今回は依頼者が医者ということもあり、"catalepsy" という単語が出てきました。辞書を引くと「カタレプシー、強硬症」となっています。日本語でもよく分かりませんね。翻訳本では「神経の病気」とも訳されていました。難しい単語ですが、前後の流れから病気の話をしていることが分かるので、たとえ辞書を使わなくても何らかの病名なんだなと推測してそのまま読み続けても良いと思います。
『The Patient』は短編ですが、序盤にいろいろと謎がちりばめられて、最終的にはきちんと一本に収束します。なるほどこの結末はあの伏線と繋がっていたんだなといつもながら感心します。ペーパーバック版では結末があっさりと書かれていますが、翻訳本ではもう少し詳しい描写がされていました。
翻訳本
『The Patient』の日本語翻訳版は『入院患者』。『シャーロック・ホームズの回想 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)』に収録されています。原文が難しく感じる場合は翻訳本と合わせて読むことをお勧めします。
シャーロック・ホームズの回想 | |
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